【006】おみやげはカルファード

おみやげはカルファード

シェルスターをはじめ、ジェニー・ファミリーの生き残りの面々は人生において、こんなに驚いたことは無い。そしてこんなに喜んだ事も無いだろう。

絶望と不安の中、何よりも望んだものがいきなり目の前に現れたのである!!

「ジェニーッッ!!!!」

「よくぞ、ご無事で!!」

「船長、生きてらっしゃったんですね!?」

知恵者シェルスター、60歳を越えているであろうグレン、この中で唯一の女性エレーナ。

皆がもの凄い勢いで、今、扉から入って来た人物のところに集まって来る。

「心配かけたね、みんな。大丈夫だった?」

ジェニーと呼ばれた人物はまだ少年と呼べるような見た目だった。

これが世間で「無敵」と恐れられる海賊?と思えるような見た目だが・・・

ジェニーと呼ばれた少年は、みんなにそう声をかけると肩に担いでいたものを、ドサッとみんなの目の前に放り投げる。

「これ、おみやげ」

「!?」

なんのことはない。おみやげとは先ほど森の中で敵に囲まれたところを何者かによって助けられたジェニー・ファミリーのナンバー2、氷炎のカルファードだった!!

「カルファード?何故ジェニーがカルファードを?」

シェルスターがジェニーに聞く。

「ははは、そんなことどうでもいいよ。なんか、すごい怪我をしているみたいだから、エレーナ、手当てしてやって」

ジェニーは軽く手を振るとエレーナにそう指示をした。

結局カルファードを助けたのは、カルファードと同じくここを目指して夜の道を行くキャプテン・ジェニーだったのだ。

ジェニーは一瞬にして三人の敵を葬り、ここまで人一人担いで来た訳だが、疲れの色一つ見せていなかった。

見たところジェニーの身長は175cm程であろうが、一方カルファードは190cmに届こうかという長身である。

そしてジェニーの体格はどちらかいうと華奢であるが、いったいどこにそれだけのエネルギーが隠されているのだろうか?

先程も伝えたが顔は、これが「無敵の男」の名を欲しいままにするキャプテン・ジェニーその人とは思えない可愛らしい顔立ちをしている。

そして髪の色、目の色は巷(チマタ)で噂されるキャプテン・ジェニーと同じく、この辺では珍しい黒色をしていた。

「坊ちゃん、いったい今までどうしてたんですか?」

この小屋で唯一老齢の海の男グレンが、自分の孫でもおかしくないぐらいの年齢のジェニーに訪ねる。

「おお!?グレン生きていたのか?それとも、もうおじいちゃんだから、海の髑髏達に見逃してもらえたのか?」

「はっはっはっ、坊ちゃんはいつもきついですねー」

生まれた時からずっと自分の面倒を見てくれているグレンに会えたのは、ジェニーとしても嬉しいらしい。照れるのを隠しながらジェニーは得意の毒舌を発揮して言った。

「俺の方は不覚にも大怪我を負って海岸にうちあげられたところを、この国の海軍少将に助けられて今はそこでやっかいになっている」

全然、違う!!

これを聞いたらアルバートあたりは卒倒するであろう。

もしやジェニー・ファミリーの一人ではなかろうかと言うことで、エランツォがリュシアンを引き取った訳だが、それがジェニーの一味どころか、あのキャプテン・ジェニー本人であったのだ!?

ジェニーは続けて言う。

「最初は傷が癒えしだい、姿を消そうかと思ったが・・・」

「ジェニー、カルファードが気付きました」

ちょうどそこへエレーナがカルファードに肩を貸しながら隣の部屋からやって来た。

「よーし。大丈夫だった?カル」

ジェニーは心配そうにカルファードに訪ねた。

「ええ、まあ」

カルファードは力強く答える。

「ところでジェニー、まずはこれからどうするんですか?」

さっきまでの焦りはどこへやらシェルスターはいつもの冷静さを取り戻し、ジェニーにこれからのことを尋ねた。

「それは決まっているよ。何をおいても、とりあえず逆襲に出ようと思うけど、シェルはどう思う?」

小屋の中の数人はジェニーのこの言葉に少なからず驚いたようだ。

先日のキャプテン・ジェニー壊滅事件で仲間は散り散り、今は態勢を立て直すのが優先なのでは?こんな状態で直ぐに反撃?と疑問に思ったようだ。

しかし、シェルスターはジェニーと同意見だった。

「ええ、まあ。私もジェニーの意見に賛成です」

シェルスターは立て板に水のように話しだす。

「散り散りになった仲間達に我々の存在とジェニーの生存を知らしめて、このままジェニー・ファミリーが自然消滅してしまうのを防ぐということですね?」

「・・・」

ジェニーは微笑みながら頷いているが・・・

「そしてそれと同時に仲間の集結を促すんですね?」

シェルスターの意見を一通り聞いたジェニーはにこやかに言う。

「全然、違う!!」

「!?え?」

真面目なシェルスターは心底ビックリした顔をする。

シェルスターは、少し戸惑う。すぐに逆襲に出る。ここまでは同意見だと言うのに違う理由が?他にどんな深謀遠慮があるというのだ?

「では、なぜ・・・?」

シェルスターの問いに、ジェニーはにこやかな笑顔のまま言う。

「単純に海の髑髏達がムカつくからだ」

「・・・」

冷静なシェルスターもこれには二の句が告げられない。

ジェニーは構わず続ける。

「とりあえず今のこの状況では、海の髑髏達を相手にするのはキツイ」

「はぁ・・・」

「最初は海賊サルーをぶっ潰して、その後に海鼠を叩く」

真面目な性格のシェルスターは素直に頷く。

「そして潜伏しているであろう仲間たちに俺たちの存在を知らしめ、集結を促す!!」

「!?えっ?」

シェルスターは少し目を丸くして言う。

「それはさっき私が言った・・・」

ジェニーは構わず続ける。

「そして、今回の黒幕と思われる海の髑髏達を叩き潰す!!」

ジェニーは自分の言いたいことだけ言い終わると、エレーナに敵の本拠地の探索を命じ、シェルスターには船の調達のプランを考えるように命じた。

そしてカルファードには全体の調整を任せる事を伝え、全てが整い次第呼びに来るようにと、ジェニーが今いるエランツォ家の住所を教える。

最後に老人のグレンを呼び、最近夜は寒いから暖かくして寝るようにと命じるとエランツォ家に戻って行った。

ジェニーの、シェルスターやグレンとのやりとりを考えると、世間一般の人々が噂する『ジェニー』とは少し人物像が違うようだ。

噂話では『世紀のヒーロー』のように武勇伝が囃し立てられるが、噂よりもユニークな少年のようであった……


下記は私が他のブログで書いた記事です。旅行が好きで興味のある方はぜひ読んでみてください。

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